最高裁判所第一小法廷 昭和33年(オ)1125号 判決 1960年12月15日
当事者
上告人 福幸紡績株式会社
右代表者代表取締役 関二郎
右訴訟代理人弁護士 辻中一二三
被上告人 株式会社住友棉行
右代表者代表取締役 住友進美
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人辻中一二三の上告理由
第一点、第二点および第四点前段について。
所論は、上告会社と被上告会社との間に綿の売買につき継続的供給契約がなされたことおよび右契約に基づき、所論約束手形が不渡となるおそれが生じた場合でも、被上告会社は上告会社に対し、綿を販売納入することを約したものであることを前提とし、原判決を非難するのである。しかし、原審は右上告会社側の主張事実はこれを肯認し得ない旨を判示しているのであつて、右判示は、挙示の証拠関係に照らしこれを是認することができる。それ故、所論は、原判示に副わない事実関係を前提として原判決を非難するものであつて、採るを得ない。
同第三点について。
所論は再審事由に該当する事実ありと主張するが、所論証人を告訴したというに止まり、未だ所論のように民訴四二〇条二項の場合に該当する事由ありとは認められず、また右証人のいかなる供述が原判決にいかなる影響を及ぼすものであるかにつき、論旨は何ら明らかにしていない。それ故、所論は採るを得ない。
同第四点後段について。
所論は、原判決主文のうち、その認容した反訴請求にかかわる部分の請求の内容が特定を欠くというのである。しかし、原審の確定したところによれば、所論の手形は(1) 昭和二九年六月二九日上告会社あて、金額二五七、五〇〇円、満期同年八月一三日の約束手形(2) 同年七月一三日上告会社あて、金額二五七、五〇〇円満期同年八月二五日の約束手形であり、原判決主文二項は、反訴請求額四六九、三〇〇円のうち、先ず満期日の早い(1) の手形につき、その金額二五七、五〇〇円の全額につき認容し、残額の二一一、八〇〇円は、満期日の遅い(2) の手形につき、その金額二五七、五〇〇円のうち右残額に相当する部分につき認容した趣旨のものであると解するを相当とする。しからば原判決には所論の違法は認められない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 斎藤悠輔 下飯坂潤夫 高木常七)
上告代理人辻中一二三の上告理由
第一点-第三点<省略>
第四点<中略>
更に又原判決は上告人に於て約束手形金二通分の金額五一五、〇〇〇円の内四六九、三〇〇円の支払義務ありと判断しているがそもそも約束手形二通以上の請求に於て右合計金額より少い金額の支払を求め仍て右合計金額より少い該金額の支払を命ずるには複数手形の何れかの金額の内金についての債権、債務関係を認定判断しなければならないことは約束手形債権の特定上必要なことは当然である。
然るに原判決は漫然と手形金二通分金五一五、〇〇〇円の内四六九、三〇〇円の支払義務ありとしている。
右二つは何れも法律の解釈を誤つたものであり、更に理由を示さないものである。